副腎皮質細胞においてステロイドホルモンの生合成に関与しているチトクロムP-450(SCC)、チトクロムP-450(11β)、および小胞体においてチトクロムP-450系に関与しているチトクロムb_5が生合成されてから、機能発現の場であるミトコンドリアや小胞体に局在化される機構に関して次の3点から検討した。 (1)チトクロムP-450(SCC)およびチトクロムP-450(11β)前駆体と相互作用をもつミトコンドリア蛋白質の検索:2種のP-450の前駆体分子の認識や、ミトコンドリア内への輸送に関与している蛋白質をこれらの前駆体の延長ペプチド約20残基のペプチドを化学合成し、これと相互作用(結合)をする蛋白質として単離、同定を試みた。約70KD、約45KDなどの蛋白質が身い出された。現在、これらの蛋白質の精製と役割について検討中である。 (2)チトクロムP-450前駆体の延長ペプチドを切断するプロテア-ゼのcDNAクロ-ニング:ラット肝ミトコンドリアマトリクスから精製された延長ペプチド切断プロテア-ゼに対する抗体を用いて、ラット肝cDNAライブラリ-(入gt11)よりこの酵素に対するcDNAを検索した。プロセシングプロテア-ゼの2つのサブユニットのうち、52KDサブユニットに対するcDNA(35kbp)が得られ、塩基配列を決定している。また、55KDのサブユニットの前長を含むcDNAをスクリ-ニングしている。 (3)チトクロムb_5の小胞体膜局在化シグナル:ラット肝のチトクロムb_5に対するcDNAを改変してそのアミノ末端側の親水性部とカルボキシ末端側の疎水性部をそれぞれ欠失したり、他の蛋白質と結合した融合蛋白質をつくり、これらを哺乳動物細胞で発現させ、細胞内局在場所を解析した。カルボキシ末端側の疎水性部をもつ融合蛋白質はいずれも小胞体に局在することから、この部分に局在化シグナルが存在することが明らかになった。
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