動物の消化管は、食品成分の持つ特性に起因する刺激を生体的の独自の信号に変換する役割を担っている。本年度においては、食品タンパク質に対する膵酵素分泌応答の、消化管内メディエ-タ-であるモニタ-ペプチドについて、その小腸での受容機構を明らかにした。 小腸上皮細胞微繊毛画分にモニタ-ペプチドと特異的な結合を見い出した。放射性ヨウ素でラベルしたモニタ-ペプチドは、微繊毛画分と結合し、大過剰の非ラベルモニタ-ペプチドの添加によって結合が阻止された。モニタ-ペプチドと構造に類似する部分のある、マウスEGF(上皮細胞成長因子)は、やはり小腸に特異的に結合し、モニタ-ペプチドも、EGF受容体と結合することが示唆されているが、本研究では、モニタ-ペプチドと、小腸上皮細胞との結合は、2種類あり、一方は、過剰EGFで阻止できるが、もう一方は、阻止できないことを明らかにした。すなわち、ラット小腸上皮細胞には、EGFレセプタ-とは別の、モニタ-ペプチド結合部も存在し、これが、消化管ホルモンコレシストキニンの分泌に関与している可能性を示した。モニタ-ペプチドは、この結合部位に対して、kdは10^<-8>M。膜タンパク質1mgあたり約160fmoleの結合部位が存在することが示唆された。また、EGFはラット膵液控訴の分泌亢進に影響を与えない。このことも、EGF受容体と、CCK放出のためのモニタ-ペプチド受容体とが異なるものであるという、本研究結果を支持するものである。
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