補体系は、抗体とともに異物排除にあたる血液酵素系であるが、血液凝固系とも深くかかわっていることが近年明らかになってきた。その接点の一つ補体制御因子の(4bpである。本因子はC4bに統合して補体系の活性化を制御する働きをするほかに、外因系の凝固因子であるプロティンSと結合する活性がある。プロティンSはプロティンCの補助因子として、外因系凝固を制御するが、C4bpに結合するとこの活性が失くなるため、血液凝固が亢進することになる。 昭和63年度に、我々はヒト培養肝臓細胞を用いてC4bの生合成の調節機構を検討し、C4bpの生合成がインタ-ロイキン6などの炎症性サイトカインによって亢進することを明らかにした。これは、C4bpは炎症の際に生合成が亢進する急性相蛋白質に属することを示唆した。 平成元年度は、実際に急性炎症のさいにC4bpの生合成が亢進しているのか、またプロティンSの生合成も同様に亢進するのかについて検討した。その結果、急性肺炎ではC4bp濃度が正常時の約2倍に増加し、治癒につれて正常値に戻ることが分った。また、プロティンSも急性肺炎で増加するが、この増加したプロティンSはC4bpプロティンS複合体として血中で存在することを初めて明らかにした。この増加したプロティンSはすべて不活性型複合体であることは、急性肺炎では凝固亢進傾向にあるという臨床所見とも符号する結果である。 その他、白血球表面の補体レセプタ-のCR3は凝固因子(第X因子)のレセプタ-としても働くことが最近明らかにされた。我々は、白血球のCR3の動態を解析し、フォルミルペプチドやC5aのような走化性因子による刺激でCR3の発現数が約2倍上昇することを見出した。さらに、ヒト血中にはC4bpと抗原性の類似した分子量6万の未知の蛋白質の存在することを見出し、その機能に関する研究を進めつつある。
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