研究概要 |
TP82は、CD9関連抗原を認識する抗体であり、凝集、serotonin放出、arachidonic acid代謝産物産生等の血小板機能を活性化することはすでに報告した(Higashihara et al.Blood 65,382-3,1985)。今回、我々は、TP82のarachidonic acid遊離機構は、初期のphospholipase A_2の限定された活性化が重要なphase、及びその後の種々の要因のsynergistic effectにより惹起されるmassive arachidonic acid releaseの起きるphaseの二段階にわかれることを見いだした。TP82は、血小板のshape changeのphaseにおいてごく少量のTXA_2を産生し、この反応は細胞外Ca^<++>の除去やTXA_2 competitive blockerによっても阻害されなかった。また、ADP receptorのblockerであるFSBAや、IIb/IIIa fibrinogen bindingを阻害するGRGDSPもこのshape changeにおけるTXA_2産生を阻害しなかった。一方、cyclooxygenase blockerを用いTXA_2の生成を阻害するとshape change及び細胞内Ca^<++>の増加は完全に消失した。これらの結果より、TP82による血小板活性化の初期においては、まず少量のTXA_2が産生され、それによりshape chage及び細胞内Ca^<++>上昇が惹起されることが示唆された。shape changeに引き続き凝集が起きるが、この時期に大量のarachidonic acidが遊離する。低濃度のTP82による刺激では、このarachidonic acid releaseは、cyclooxygenase inhibitor、FSBA、GRGDSP、及び細胞外Ca^<++>除去等の処理により著明に抑制された。これらの結果より、凝集にともなうmassive arachidonic acid releaseには、thromboxane A_2産生、細胞外Ca^<++> influx、遊離されたADP、GP IIb/IIIa complexへのfibrinogen bindingなどのsynergistic effectが重要であることが示唆された。
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