昨年度単離したマボヤホメオボックス遺伝子(AHoxl)について、その構造をcDNAクロ-ニングにより推定した。コ-ドされるタンパク質は741残基で、そのホメオドメインはdevergeした配列を持つ。既知のものと比較した場合、ホウジョウバエH2.0のホメオドメインにのみ高い相同性(70%)を示し、他とは30ー50%の相同性しか示さない。AHoxlの発現をノザンブロットにより調べたところ、受精卵および中期尾芽胚までの初期胚においては発現のレベルは低いが、幼生期に達すると高レベルとなることが判明した。(In situハイブリダイゼ-ションによれば、変態後の幼若個体において消化管に発現が認められた。)成体においては、小腸、内柱などの消化器管および肝などの内胚葉由来の組織に高レベルの発現が認められた。この発現パタ-ンは、ショウジョウバエのH2.0のそれと類似しており、AHoxlは内胚葉の器官分化、あるいはその組織特異性の維持に働いているものと考えている(投稿準備中)。昨年度以来さらに他のホメオボックス遺伝子の探索を種々のプロ-ブを用い試みてきたが、オリゴヌクレオチドプロ-ブと3M塩化テトラメチルアンモニウムによる洗浄を用いる方法により第二のホメオボックス遺伝子を受精卵cDNAライブラリ-より単離することに成功した。この遺伝子のホメオドメインもまたdivergeした配列を持ち、約2.8kbのmRNAをコ-ドする。その発現のレベルは、受精卵、8.16細胞期をピ-クとして発生を追って次第に低下する。このような発現パタ-ンは、我々が当初ホヤを用いるのに当たり期待していたものであり、現在、細胞系譜との関連に注目しながらin situハイブリダイゼ-ションを試みている。 In situハイブリダイゼ-ションについては、マボヤでは当初予想していたようには満足に働かなかったが、89年秋 佐藤がJefferyの研究室より技術を習得し、徐々にではあるが結果が出せる状態になりつつある。
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