研究概要 |
イノシト-ル燐脂質の代謝回転を介するトランスメンブランコントロ-ルにおいてCa^<2+>-燐脂質依存性プロテインキナ-ゼ(Cキナ-ゼ)はその中心的役割を演じていると推定されるがその細胞内基質及びその機能は不明と言ってよい。一方、プロテインホスファタ-ゼは膜を介したシグナルトランスダクションにおいて情報伝達の停止に働くばかりでなく、インスリンの刺激伝達においては積極的に情報伝達にも関与する事実も知られており、重要な働きを演じていると推定される。今回我々はヒト赤血球のType 2A プロテインホスファタ-ゼ(分子量180,000,サブユニット構造α_1β_1δ_1)の種々プロテインキナ-ゼによる燐酸化を検索した。Ca^<2+>-カルモジュリン依存性プロテインキナ-ゼll、ホスホリラ-ゼキナ-ゼ、ミオシン軽鎖キナ-ゼ、カゼインキナ-ゼI、Gキナ-ゼはいずれのサブユニットも燐酸化せず、Aキナ-ゼとCキナ-ゼが調節サブユニットδ(74kDa)のみを定量的に燐酸化した。この燐酸化はホスファチジルセリン、ジオレインにより促進されるが、Ca^<2+>はむしろ抑制した。Aキナ-ゼ及びCキナ-ゼで燐酸化したδサブユニットのV8プロテア-ゼ、パパイン消化燐酸化ペプチドはSDSPAGEで同じ泳動像を示し、同一セリン残基の燐酸化が示唆された。この燐酸化で、Aキナ-ゼで燐酸化したH1ヒストンの脱燐酸化は1.5倍促進を受け、Type 2A プロテインホスファタ-ゼの活性調節にAキナ-ゼとCキナ-ゼの関与が示唆され、細胞内情報伝達における伝達終止の一機構と推測された。
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