研究概要 |
リガンドによる刺激-分泌連関の過程に重要な役割を果たすと考えられるレセプタ-作働性カルシウム(Ca)流入のメカニズムを解明する目的で、ラット腹腔内肥満細胞にパッチクランプ法を行ない、分泌刺激物質によって誘起される電流の性質を解析した。分泌刺激物質のcompound 48/80で刺激すると、細胞外Caに依存する内向き電流が生じ、その活性化が脱分極にはよらず、なんらかのセカンドメッセンジャ-によるものと推定された(Kuno et al.,1989)。肥満細胞浮遊液に蛍光性Ca指示色素fura-2を負荷し、刺激後の細胞内Ca濃度の変化を測定したところ、2峰性の上昇が観察され、第2峰は細胞外Caを低下させると消失したためCaの流入によるものと考えられた。外液の2価イオンをマンガン(Mn)に替えると、前記の第2峰とよく似た時間経過でMnの流入による蛍光の消退が観察され、Ca透過性チャネルはMnにも透過性があることが示された。百日咳毒素で前処理した標本では、Ca、Mnの流入とも抑えられた。cell attached patchでは、compound 48/80によってバリウム(Ba)電流が活性化されるが、百日咳毒素によって脱顆粒が抑えられた細胞では、著明なBa電流は誘起されず、チャネルの活性化にGTP結合蛋白が関与していると推定された。又わずかに誘起された例では、単一チャネルの振幅には変化がなく、開口確率が減少したものと推定された。これらの結果は、脱分極によって開口する膜電位依存性Caチャネルとは、異なるタイプの2価イオン透過性チャネルが肥満細胞の活性化過程に寄与することを示唆するが、抗原など生理的刺激下での役割などは今後検討しなければならない課題である。結果は、生理学会(1989年4月)、NCPカンファレンス(1989年10月)等で報告している。
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