1.日本語の近畿方言および東京方言のあいまい文の発話の音声分析を行ったところ、右枝分かれ構造に伴う大きな統語境界が文中に含まれる意味での発話の場合には当該統語境界直後にFoによるフレ-ズの大きな立て直しが必ずあり、かつ統語境界にポ-ズが生じることもあった。これに対して、大きな統語境界が文中に含まれない意味での発話の場合には同一箇所でのポ-ズは存在せず、しかもFoによるフレ-ズの立て直しの量はわずかであった。 2.日本語の近畿方言および東京方言のあいまい文の発話について、パ-コ-ル合成の手法により、本来Foによるフレ-ズの大きな立て直しのある部分のFoを相対的に低くしたり、逆に本来Foによるフレ-ズの立て直しがわずかである部分のFoを相対的に高くしたりすると、聞き手はそれらの文を本来の発話の意味とは異なるもう一方の意味で理解した。ポ-ズの削除や挿入のみによっても聞き手の意味判定が逆転することもあったが、Foの場合ほど鋭敏な変化はなかった。 3.中国語のあいまい文の発話の音声分析を行った結果、大きな統語境界が文中に含まれる意味での発話の場合には、統語境界直前の語の継続時間が大きく引き伸ずされ、かつその後にポ-ズが存在することがわかった。一方、大きな統語境界が文中に含まれない意味での発話の場合には同一箇所での継続時間の引き伸ばしやその直後のポ-ズは観察されなかった。 4.中国語のあいまい文の発話について、デジタルソナグラフによるポ-ズの削除・挿入および語の継続時間の操作により、聞き手は文を本来の発話の意味とは異なるもう一方の意味で理解することがわかった。
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