中部日本-北海道における最終氷期の自然環境を復元するために、野外調査および従来の研究成果の整理、再検討を行った。野外調査は北海道の十勝平野および北西部の羽幌地域において、とくに永久凍土に関連して形成される化石周氷河現象の記載、花粉分析試料の採集を行った。 室内では、花粉分析を行い、花粉ダイアグラムを作成して最終氷河期の古植生環境を検討した。この古植生の成立と、化石周氷河現象から推定される古環境との間の矛盾点について検討した。さらに、矛盾点を解消するような気候環境を復元する試みを行った。 主要な成果は以下の通りである。 1.確実に永久凍土に関連して形成されたと考えられる化石周氷河現象は、永久凍土を核とする凍結丘起源の化石形に限られる。アイスウエッジが存在したことを示すような証拠はまったく発見されない。 2.十勝平野の段丘崖斜面においてソリフラクションロウブの化石形をみいだした。これにより、氷河期には低地でも強力な周氷河作用が働いていたことがわかる。 3.花粉ダイアグラムから知られる主な点は、1)約4万年〜1.5万年前の期間において、従来、最も寒冷とされていた3.2万年前頃は、連続的永久凍土を伴うツンドラ環境になったとは考えられないこと、2)最も寒冷だったのは1.5〜1.9万年前の時期であり、パッチ状に分布する永久凍土と疎らな林、草原が広がっていたかもしれない。 最終氷期の最寒冷期の北海道東部は永久凍土地域の南限付近であったと推定される。
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