研究概要 |
酸化物超伝導体をマグネットおよび電力機器用材料として実用に供するためには大きな電流密度と機械的強度が同時に要求される。その目的のため銀シ-ス材が実用上構造的に安定であるので、Y Ba_2Cu_3O_<6+x>(Y系酸化物)と(Bi,Pb)SrCaCumOy(Bi系酸化物)をAgパイプに充填し、種々の条件のもとでTMT(加工熱処理)を施しテ-プ材を作製し、臨界電流密度(Jc)と微細組織の相関について検討し以下の結果を得た。Y系銀シ-ス材ではテ-プ厚さの減少とともにJcは増加すること、加工法としてはスェ-ジングとプレスの組合せが最も効果的であることが判明した。ポ-ルフィギュア法で結晶粒の配向性を調べたところテ-プ面に対してある一定の角度をもって各結晶粒のC面が配向することがわかり、このことがY系テ-プ材のJcを低い値に制限する原因であることが推論された。一方Bi系銀シ-ス材では熱処理温度に敏感であり、液相が存在しない範囲で最も高い温度でJcが高くなること明らかとなった。またTMT処理としてプレスと煙鈍を3回までくり返したが、くり返し回数が多いほどJcは高くなった。テ-プ材の組織は高Tc相と(Sr,Ca)_3Cu_5O_xあるいはCuOが主として存在し、不純物相の体積分率が小さいほど、高Tc相の配向性がよいほどJcが高くなることが明らかとなった。4.2K磁場中でのJcの値は結晶粒界でのピン止めによって決ることがデ-タ解析の結果推論された。付随してテ-プ材の引張強度について検討したところ、酸化物層の破断強度はJcと対応して増加すること、しかし最も高い値でも実用上必要とされる破断強度よりはるかに低く、機械的特性の改良が急務であることが判明した。
|