1.高温超伝導体の発現機構は現在のところ解明されていないが、少なくとも2次元伝導面が重要な因子であることは共通した意見である。またスピン1/2の量子効果が本質的な役割をしているとの指摘もある。こうした背景から本研究ではNd-Ni-O、Nd-Ba(Sr)-Fe-O系を固相法により合成し、その物性を検討し超伝導発現に寄与している因子を解明した。一方、従来の固相法では熱力学的に安定なものしか合成できず新規の超伝導体の合成の変化が限定されてしまう。そこで、低温で反応が起こるプラズマ有機金属化学気相法(POMCVO)法を開発し、この方法による超伝導体の合成を検討した。 2.表題のIn-Ba-Ca-Cu-O系は残念ながら単相化しなかった。この理由は反応性の高いInがCaと反応してIn_2Ca_2O_5を合成し、ペロブスカイト(Caを含む)に寄与しないためである。しかし、In-Ba-Cu-O系は二重ペロブスカイト構造を有する結晶を形成し、電気伝導性も認められた。しかし、キャリヤ濃度が低く半導体的であり超伝導性は見い出せなかった。キャリヤド-ピングをLa、あるいはKを用いて行なったが成功しなかった。この原因については現在検討中である。一方、Cuを含まないNi、Fe系のペロブスカイト構造の結晶を合成し、その超伝導性を調べたが、残念ながら超伝導性は見い出せなかった。Ni^+(スピン1/2)を含む系は絶縁体でありこの系の3d軌道エネルギ-が極めて高いことを示唆している。一方、Fe^<4+>、Fe^<3+>を含むペロブスカイトは100K程度でキャリヤ-の凍結が起こる。これは2Fe^<4+>→Fe^<3+>+Fe^<5+>の不均化反応によるものと解釈されており、正孔のカップリングは起こるものの局在性が強いためにCooper対にはならなかったものと考えられる。POMCVDではBi-Sr-Ca-Cu-O系でBi_2Sr_2CaCu_2Oxの超伝導薄膜の合成に成功した。この膜はポストアニ-ルをせずに60Kの超伝導Tcを示し、他の方法に比較して優れた合成方法である。
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