1.降水の安定同位体が水蒸気輸送過程に強く規制されていることを用いて、世界に100ヶ所以上のステ-ションを有する国際原子力機関と世界気象機関共同の降水の観測ネットワ-クによる同位体測定デ-タと、衛星デ-タとを関連づけて大規模な水循環過程を解明するために、衛星デ-タの処理を行った。大型計算機を用い、積雪被覆面積の月別デ-タを取出し、また、Global Vegetation Index(GVI)週間デ-タについては月間値のカラ-表示化を実施した。これらの面積や活動の時計列変動については、購入した高速パソコンを用いて画像処理を行い、これらの月別変動と年々変動の様子を明らかにした。 2.降水の同位体デ-タについては、パソコンを用いてグラフ化し、衛星デ-タと関連づけた。先ず、アジア地域における大規模な水循環過程を検討したところ、積雪被覆面積に加えて積雪深のデ-タの必要性と、東ユ-ラシアにおける積雪量と日本の降水の同位体デ-タとの間の新たな関連、を見出すことができた。 3.2.に記した関連は、私が今日まで見出してきた、日本海側の降雪に関わる水蒸気輸送過程などに関する我々が現在持ちあわせている同位体に関する知識からは理解できない問題と同一のものであった。「ひまわり」の衛星画像からは、新潟以北の日本海側と北陸地方では降雪をもたらす降雪雲システムが異なること分かってきた。そこで、MOS-1の衛星デ-タを用いて、日本海上のそれらの雪雲における水蒸気量と雲水量を計算したところ、新潟以北と北陸地方の降雪をもたらす日本海上の降雪雲システムにおいて、水蒸気量はほぼ変わらず、雲水量は前者の方が後者より大きいという、これまた予想外の結果であった。これらのことから、東アジアから日本へかけての水循環の機構が未知の部分の多いシステムであることが明らかになった。
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