本研究の対象地域である立山付近(飛騨山脈北部)のように起伏が大きい山岳地域のリモ-トセンシングにおいては太陽光による陰影の処理は一つの技術的な問題点である。この研究では、DTMに重ね合わさるようにリサンプリングした画像に対し消影処理を行ない、しかも2季節の画像を用いて解析の精度を上げることができた。 樹林判別分類項目は、落葉広葉樹・常緑針葉樹・ハイマツ・草地・裸地・水面とした。DTMに画像が重ね合わさっているため、ピクセル単位で標高値が知れており、隣接大気のアメダス気象観測値と輪島の高層気象デ-タ(気温減率)からピクセルごとの日平均気温を計算し、ピクセルごとの温度環境の基礎デ-タとした。さらにDTMからは地形特性(傾斜・方位など)を計算した。また2年間のデ-タしか得られていないが、多時期の衛星画像から得た積雪継続期間のデ-タ(消雪期日)も森林立地の条件として重要であることがわかった。 判別分類されたそれぞれの樹林の立地条件を分析して得た結論のうち落葉広葉樹と常緑針葉樹についての定性的な結論を次に述べる。 (1)落葉広葉樹 低地から亜高山帯までの広い標高帯を占め、北西〜北の範囲の方向にはあまり分布しない。高い標高地の落葉広葉樹は主にダケカンバ林と思われるが、その消雪期日は針葉樹林に比べて遅い。本来亜高山針葉樹林帯が占有する高度帯で多雪のように針葉樹の生育を阻害する要因があるとき、そこに代償的に分布しているものと考えられる。 (2)常緑針葉樹 標高による頻度分布の中心は2000m付近で、それよりも高い場所では消雪期日・傾斜方位・傾斜角度などの環境条件によりハイマツ、あるいはダケカンバと競合する。落葉樹に比べて傾斜・方位などの制限を受けやすい。耐雪性は弱く、消雪期日の早いところに分布している。
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