目的 本研究はTiAl金属間化合物に最近見出された動的再結晶の特性を調査し、高温加工によるこの金属間化合物の組織制御法を確立することを意図したものである。 方法 化学量論組成の表記金属間化合物について、アルゴン雰囲気中で温度が1173Kから1473K、歪速度が5.0×10^<-5>s^<-1>から1.0×10^<-3>S^<-1>の試験条件で圧縮試験を行なった。所定の歪まで変形させた後冷却し光学顕微鏡による組織観察、シュルツの反射法による集合組織の計測を行なった。 結果及び考察 上記実験条件内では、真応力-真歪曲線は例外なく変形初期に応力の極大値を示した後定常状態に遷移する、いわゆる単一ピ-ク型の形状を示した。定常状態まで変形した試料の結晶粒径はすべて変形前とは異なっており、全試験条件で動的再結晶が生じていた。ピ-ク応力近傍まで変形した試料について組織観察した結果、新粒の生成機構にはいわゆる核生成-成長機構とバルジング機構の2種があり、両者はピ-ク応力150MPaを境として、低応力側ではバルジング機構が、高応力側では核生成機構が支配的であることが判明した。 (202)及び(111)極点図により集合組織を調査した結果、(202)繊維集合組織の形成される場合のあることが見出された。(202)繊維集合組織の発達度とピ-ク応力の間には良い一対一対応があり、ピ-ク応力が低いほど繊維集合組織は鮮鋭化した。このことから、見出された繊維集合組織は、変形により生じた格子回転がバルジングによる再結晶下で継続して進行した結果形成された一種の変形集合組織であると結論した。 以上のように、動的再結晶によって結晶粒径と集合組織が同時に制御できることから、今後種々組織を制御した試料を作製し機械的性質の調査を行なう予定である。
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