ビス(9-トリプチシル)X型化合物で発現される特異な立体異性現象-位相異性-について、残されたいくつかの重要な問題について取り組んだ。モデル化合物の合成が難航し、その合成しか行なうことができなかったが、次年度以降は当初の目的に沿って各種測定を行う予定であり、一部については既に始まっている。 1.相関回転障壁の決定(1)モデル化合物X=CH_2、Y=F、Z=Hについては様々な試みにも拘らず、合成出来なかった。しかし^<19>FをDNMRのプロ-ブとして用いるにはフッ素は片側でもよく、その合成には成功した。(2)時間尺度の短いESRを用いる目的でケトンX=CO、Y、Z=HをTHF中Kで還元してみたところ、暗赤色に変化した。クエンチした結果は複雑であったが、目的の(形式的には共鳴安定化のない)ケチルの色である可能性もあり、ESRの測定を依頼している。 2.絶対立体配置の決定とギヤ-スリップ機構の解明 dl体の光学分割を行い、光学的に純粋な異性体を得ることが不可欠であり、2系列の化合物X=CH_2、Y=H、Z=OCH_3、CO_2CH_3について成功した。前者はエ-テルを一度加水分解し、光学活性2-フエニルプロピオン酸のモノエステルとして、後者は対応するメチル体を合成し、カルボキシル基に変換した後、光学活性α-フェニルエチルアミンのビスアミドとして、旨く光学分割することができた。現在単結晶の育成、およびd【double arrow】l相互変換の速度論的解析を行っている。
|