我々はすでに有機スズトリフラ-トがアセタ-ルに対しては温和な陽イオン発生促進剤として働き、アルデヒドに対しては電子受容体として働くことを見つけている。本年度は各種シリル求核剤とカルボニル化合物およびアルアァエノンとの反応に対する触媒としての機能について検討した。 (1)カルボニルおよびアセタ-ルとシリル求核剤との反応 触媒量のBu_2Sn(OTf)_2(1)が上記の反応に対して極めて優れた選択性を示すことが判明した。すなわち、シリル求核剤は1の存在下アルデヒドとは反応するが、ケトンとは反応しない。一方、ケトンアセタ-ルからは対応する付加生成物が得られるのに反して、アルデヒドアセタ-ルは殆ど反応しない。アセタ-ル化によりケトンとアルデヒドの反応性が逆転したことになる。これは1の温和なルイス酸性のためにカルボニルおよびアセタ-ルの徴妙な反応性の差が見分けられたものである。さらに1はカルボニル基のアセタ-ル化にも有効であることが判明した。したがって、アセタ-ル化とシリル求核剤との反応をワンポットで行うとアルデヒドの存在下ケトンのみを選択的に変換することができる。 (2)Robinson Annulation エノ-ルシリルエ-テルのマイケル付加反応を触媒量の1の存在下で行うといかなるアルファ、ベ-タ不飽和ケトンもなんらの困難もなく受容体として用いることができる。得られた付加体はMeONaにより高収率で対応する環化体に変換される。勿論これらの反応を組み合わせるとRobinson Annulationをワンポットで行うことができる。
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