研究概要 |
抗HIV抗体の検出法については2つの問題点がある。その1つは測定感度である。測定感度については、抗インスリン抗体と抗サイログロブリン抗体をモデルとして、従来法より1,000倍ないしそれ以上高感度化できる測定システムを開発した。つまり、従来法では血清などの測定試料中の非特異イムノグロブリンが非特異的に抗原不溶化固相に吸着するために測定のバックグラウンドが高くなり、高感度化ができなかった。そこで、抗原坑体結合物を1つの固相上にトラップして固相を洗浄することにより大部分の非特異イムノグロブリンを除去した後、抗原抗体結合物を固相から溶出して別の新しい固相へ移すことにより、最初の固相に結合していた非特異イムノグロブリンを一層完全に除去して、測定のバックグラウンドを格段に低下させ超高感度化を達成した(免疫複合体転移測定法)。抗原抗体結合物の固相へのトラップと溶出はジニトロフェニル基と抗ジニトロフェニル抗体、ビオチンとアビジンなどを用いて行った。もう1つの問題点は病原ウイルスそのものを抗原として用いれば非能率的で危険を伴うことである。この点を克服するためにHIVの部分ペプチドを用いる計画をたてた。まず、HTLVーIのgag(14ー139)ーenv(197ー295)を用いて免疫複合体転移測定法を試みたところ、HTLVーIそのものを使うゼラチン粒子擬集法やウエスタンブロット法より1,000〜3,000倍高い感度の測定法が可能となった。このことは不溶性のペプチドでも免疫複合体転移測定法の高感度が可能なことを示す点で大きな意味があった。gpー46(188ー205)を用いてもほぼ同様の結果が得られた。そこで、HIVのgpー41(586ー606)を用いて免疫複合体転移測定法を試みたところ、gpー41(586ー606)を用いる従来からのELISA法より数百倍高感度となることがわかったが、これでは検出できないHIVキャリアー血清のあることがわかり、さらに有効なペプチドを準備中である。
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