HIV感染患者の免疫不全はCD4陽性T細胞の消失が主因と考えられている。果して、CD4陽性の細胞がいかなる機序によって減少するのかを調べる目的で、ヒトにおいて、ウイルス感染細胞を融解すると考えられているキラ-T細胞並びにNK細胞の細胞融解機序を解析した。NKと標的との結合に関する分子として、NCAMの同定を行い、血液幹細胞をはじめとするNCAMを表現した細胞がNKの標的となることを明らかにした。また、キラ-活性の増強機序に関しては、IL-2Rβを介するシグナルの重要性を明らかにし、in vivoにおける非特異的なキラ-活性増強機序を考察する手段を得た。また、CD4陽性細胞を融解すると考えられるT細胞で、CD8細胞の産出する細胞融解物質パ-フォリンを示標として解析するための初段として、パ-フォリンに対するモノクロ-ナル抗体の作製に成功した。得られたモノクロ-ナル抗体を用いて、NK細胞に加えてCD8陽性細胞群の特定の亜群のみが標的融解物質を産出していることを明らかにした。そして、パ-フォリンの合成能が、IL-2レセプタ-を介したシグナルによって高まり、IL-2によってキラ-細胞が活性化される細胞内の機序を明らかにした。また、マウスのCD4の解析を通じて、ヒトCD4のシグナル伝達機序に関する知見を得るため、CD4のエピト-プのうち、今まで得られなかった部分に対するモノクロ-ナル抗体を作製することに成功し、米国のLittman博士の協力を得て、CD4の機能に関与するエピト-プの解析を行っている。
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