研究概要 |
ヒト、兎、ラットの肝臓と小腸では一部のapoB-100蛋白mRNAのほぼ中央部に位置するシトシンが転写後にウラシルに置換し、premaure stop codonが出現する。その結果として分子量が約半分のapoB-48蛋白が合成されると考えられている。このことはDNA上の遺伝情報が転写後に変換可能であることを示し遺伝暗号の可能性の一例として重要な発見であった。私は本年度は1.この現象がマウスでも観察できるか、2.この現象がなんらかの生理的意義を持っており、しかも積極的に生体によってコントロ-ルされているのかを検討し以下の新しい知見を得た。1.マウス肝臓のcDNAライブラリ-よりapoBのクロ-ンを分離し塩基配列を決定した。その結果(1)、分離した9つのクロ-ン全てがpremature stop codonを有していた。(2),prematue stop codon周囲の塩基配列はヒト、兎、ラット、マウスで非常にconservativeであり、90%以上のhomologyを示した。またSouthern blot分析の結果、apoB遺伝子の構造及び制限酵素の認識部位もよく維持されていた。2.1.で決定された塩基配列を基にして合成オリゴヌクレオチドを作製し、肝、小腸mRNAよりPCR法でapoBmRNAの増幅を行い、apoB-100とapoB-48に特異的なオリゴプロ-ブを用いたDifferential hybridizationで両apoBmRNAの量比を定量した。その結果小腸でほぼ全てのapoBmRNAが置換を受けているのに対し肝臓では30-50%が置換を受けていなかった。現在は絶食、高脂肪食投与時や、発生、老化に伴ってapoBmRNAのeditingがどの様にコントロ-ルされているかを検討中である。さらにヒト、兎、ラット、マウス、と進化的に下がるに従い、editingが頻繁に行われていることを考えるとDNA上にpremature stop codonが存在するapoB遺伝子の祖先型がさらに下等な動物で存在するはずであると考え、Drosophila等のDNAで検索中である。
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