ミオシンサブフラグメント-1(S-1)のラマンスペクトル測定により、ランダム構造由来と考えられている1240cm^<-1>付近のラマン活性が高く、ランダム構造となっている部分がミオシンに比べ多いことがわかった。また495cm^<-1>に小さなバンドが認められ、これがS-S結合によるものであれば、今後S-1部の構造変化のプル-ブとして使用できる可能性がある。 S-1にADPまたはATPを添加した場合、S-1の二次構造の大きな変化は見られなかった。ただS-1にADPを加えると、1320cm^<-1>のバンド(CH変角振動)の強度が少し増大する。またATPを加えると、環境の影響を受けにくいとされている1004cm^<-1>のバンド(Phe)の強度が減少する。現在のところこれが何を意味するか検討中である。 EDTA存在下でS-1のラマンスペクトルを測定するとAmide IIIバンドの中で、ランダム構造を表す1244cm^<-1>のバンドと、α構造を表す1265cm^<-1>の強度比が逆転しており、スペクトル上ではα構造が増加したように見える。 G-アクチンとF-アクチンのラマンスペクトルも測定し、十数本のバンドの帰属を行った。この二つのスペクトルはほぼ一致していたがAmide IIIバンドの中心がG-アクチンの場合、F-アクチンに比べて、約10cm^<-1>低波数に移動しており、しかもバンドの形が鋭いため、β構造が増大しているらしい。 最近G-アクチンをある試薬で化学修飾すると、重合しないが、S-1と1:1の結合を示すG-アクチンを得ることができた。今後このG-アクチンを用いてS-1との相互作用による構造変化をラマンスペクトルにより解析していきたい。
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