研究概要 |
筋収縮において、無負荷の短縮と抵抗増加時の短縮とで滑り運動系の化学-力学共役状態がどのように異なるのかを研究するために、筋原線維の短縮速度とATP分解経過をイオン強度及び温度を変化させて測定した。ウサギ腸腰筋を全筋のまま、約120%引き延ばした状態で硬直させた後、ホモジェナイズして伸張筋原線維(サルコメア長〜2.6μm)を調製する。この筋原線維を25〜150mM KCl,20mM MOPS/KOH(pH7.2),1mM MgCl_2に分散させ、ソレノイド駆動迅速混合装置を用いてATP分解及び短縮を測定する。ATP分解は、0.3M過塩素酸で反応を停止し、改良MalachiteGreen法によって無機リン酸の増加を定量する。サルコメア長変化は200mM酢酸緩衝液(pH4.6)/1.25%Glutaraldehydeで短縮を止め、測徴接眼装置をつけた位相差顕徴鏡によって測定する。 150mM KCl存在下20℃でMgATP添加200ms後にCaCl_2(0.5mM)を加えると、サルコメアは急速に短くなり(phase 1),1.6μmに達した後は、Contraction Bandsの形成と共にゆっくりとした短縮(phase 2)に移行する。滑りに対する抵抗がないphase 1の短縮速度は>10μm/s/halfsarcomereであった。このときATPのProduct Releaseはほとんど見られない。これに対し滑りに対する抵抗が増加していると考えられるphase 2ではATP分解は加速した。イオン強度の低下と共に、phase 1の短縮速度は低下し、逆にphase 2の短縮続度は増加した。このときphase 2に共役したATP分解もより加速した。 また、150mM KCl存在下ではContraction Bandsの形成は非常にゆっくりしているにもかかわらす、ATP Product Releaseは一時的にみられるだけで、この一過性のATP Turnover Rateの上昇と短縮中のエネルギ-のアンバランスの関係を研究することは、滑りの分子機構の解明の一助となるであろう。
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