研究概要 |
1) ラット脳のグルタミナ-ゼを精製し、それを抗原としてウサギを免疫し抗血清を得た。この抗血清はヒト脳のグルタミナ-ゼ活性を95%以上吸収できた。さらに、イムノブロッティングテストによって、この抗血清がヒト脳の分子量64,000の蛋白のみを認識することが判明した。以上の結果から、この抗ラット脳グルタミナ-ゼ抗血清はヒト脳のグルタミナ-ゼを特異的に認識すること、ヒト脳のグルタミナ-ゼは分子量64,000であること、さらにこの分子量64,000の蛋白分子以外にグルタミナ-ゼ活性を有する蛋白は5%以下の活性しか持ち得ないこと等が結論される。 2) 上記の抗血清を用いてヒト脳のグルタミナ-ゼ免疫活性の分布を調べた。大脳皮質においてはBetz細胞を含む多くの錐体細胞にグルタミナ-ゼ免疫活性が認められた。この所見は、錐体細胞の多くがグルタミン酸作動性神経であるという考えと一致する。さらに、若干の非錐体細胞にもグルタミナ-ゼ免疫活性が存在した。 3) アルツハイマ-病の一例において、同様の免疫組織化学的検索を行なった。角回連合野の顆粒層より上層において、グルタミナ-ゼ陽性神経細胞体数が著名に低下していた。この低下はニッスル染色像にみられた神経細胞体数の低下より激しいものであった。アルツハイマ-病脳の大脳皮質におけるグルタミナ-ゼ免疫活性の変化を、さらに症例を重ねて検索する予定である。
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