老人脳、特にアルツハイマ-病などの痴呆脳では老人班・アルツハイマ-原線維変化などの沈着物質が畜積する。これらの物質の不溶化の原因としてトランスグルタミナ-ゼによる蛋白視の架橋を想定し、架橋物に特異的な抗体を用いて検討することを試した。まず、モルモット肝臓から組織型トランスグルタミナ-ゼを精製し、これをウシ血清アルブミンに作用させて架橋アルブミンを作成した。2%SDSで洗浄後これを抗原としてモルモットを免疫し、架橋アルブミンに対する抗体を含む血清を得た。この血清から架橋アルブミンに特異的な抗体を単離するため、非架橋アルブミンと架橋アルブミンをそれぞれ固定化したカラムを作成し、前者とは結合せず後者とのみ結合する抗体を得た。この抗体まELISAで非架橋アルブミンは反応せず、架橋アルブミンを抗原とした場合のみ陽性であった。また、ヒト皮膚組織切片の免疫組織染色では角質化の高い表皮部分が陽性となり、抗体が角質化に伴い形成される架橋蛋白質を認識している可能性を示唆した。しかしその反応性は弱く、他の組織への応用のためには改善が必要と思われる。例えば、抗原部位を露出させる処理などにより、微量の架橋蛋白質を検出することも可能となり得る。これを裏付けるように、ラット組織のウエスタンブロットでは種々の陽性バンドが認められた。
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