研究概要 |
アルツハイマ-病(AD)、Down症脳中ではアミロイドβタンパクを主成分とするアミロイドが広範囲に沈着することが知られている。しかしながらこのアミロイドβタンパク前駆体(APP)からアミロイドβタンパクにいたる過程については未だに不明である。我々はこれまでこのアミロイド生成機序解明を目的として研究を行ってきた。本研究では脳および培養細胞におけるAPPおよびその関連タンパクの免疫化学的解析を行った。この研究により以下のことを明らかにした。(1)免疫グロブリンL鎖可変領域特異的モノクロ-ナル抗体(Hy20-54-16-31)がAD脳中のアミロイド物質と反応し、しかもアミロイド沈着初期と考えられるdiffuse plaque中のアミロイド物質とも反応した。このことは、我々がすでにアミロイド物質と免疫グロブリン,補体、マクロファ-ジとの関連性を指摘したことともあわせ、アミロイド沈着と免疫機構との関連性が推定された。(2)各種培養細胞におけるAPPをAPP各部位に対する抗体を用いて、蛍光抗体法による免疫組織化学、SDS電気泳動およびimmunoblot法を用いて解析し、細胞により分泌型および非分泌型APPが存在することを見いだした。またとくにPC12h細胞における分泌型APPはアミノ酸残基541-596の間でプロセシングを受けていると推定された。今後、アミロイド沈着と免疫機構との関連性、APPのプロセシング部位とアミロイド線維形成との関連性についてのより詳細な研究が必要であると考えられる。
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