1.神経細胞から放出されたグルタミン酸を検出する方法として、グルタミン酸受容体を豊富に含んでいる神経細胞による電気生理学的バイオアッセイ法を確立した。アメリカナマズの網膜からタンパク質分解酵素を使って単離した水平細胞は約1μM弱の濃度のグルタミン酸にも応答した。これはキンギョの水平細胞に比較して感度が数十倍高い。グルタミン酸がトランスミッタ-の候補として挙げられている網膜細胞を単離し、顕微鏡で観察しながらマイクロマニプレ-タでこの細胞を移動させてアメリカナマズの水平細胞の上に密着させて置いた。両者の細胞をそれぞれパッチ電極を使って電位固定(Whole-cell clamp)し、膜電流を同時記録した。細膜細胞を脱分極させると、水平細胞で応答を記録することができた。現在、この応答の性質を検討している。 2.アミノ酸キャリア-がCa非依存性のトランスミッタ-放出に関与している可能性が示唆されているので、網膜グリア細胞のグルタミン酸キャリア-の性質を解析した。グルタミン酸1分子とNa^+3分子が細胞外からキャリア-に結合すると、グルタミン酸が細胞内に流入した。他のイオンは関与していなかった。グルタミン酸の流入は電流を発生させ、膜の過分極により応答は指数関数的に増大した。一方、脱分極によって細胞内からグルタミン酸が流出したが、グルタミン酸1分子とNa^+1分子が共輸送されるため電流は発生しなかった。グルタミン酸応答の膜電位依存性・温度依存性・反応のキネティクスを検討した結果、グリア細胞のグルタミン酸キャリア-は開状態に凍結されたイオンチャネルのような性質を持っていると考えられる。
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