研究概要 |
1.出生直前のラット胎仔の海馬体からエキスプラントを採取し、定法に従って培養した。約一週間の培養の後、単-ニュ-ロンにパッチクランプ(whole-cell clamp)用の電極を当て、周囲の神経線維束を電気刺激したところ、約100pAの興奮性シナプス後電流(EPSC)が観察された(0.01mMビキュキュリン存在下)。0.1Hzの刺激頻度において対照のEPSCを記録した後刺激頻度を短時間だけ高め(50HZ,1秒間のテタヌスを10秒間隔で二回)、その後再び0.1Hzの刺激頻度に戻して20-30分観察を続け、長期増強の発生の有無を検討した。約20%の実験において、電流は30%以上増大し、観察している間その状態を保った。この事は、組織培養条件においても入力線維束のテタヌスが長期増強を誘発し得ることを示している。しかし残りの細胞では、EPSCが全く増強しないばかりではなく著しい振幅の減少を示したものがあった。さらに高い確率で安定に長期増強を誘発する条件(電極内液および刺激方法)を見出だすことが今後の実験のために必要であると考えられる。 2.テンジクネズミの海馬体からいろいろな厚さの横断切片をマイクロスライスによって作製し、標準人工液中に保った。一時間以上のインキュベイション後ノマルスキ-顕微鏡下に観察したところ、50μm以下の厚さの切片において、苔状線維の終末と思われる構造が明瞭に認められた。したがってこの材料は、中枢のシナプス前膜のカルシュウムチャンネルの研究に好適であると考えられる。
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