研究課題
試験研究
ハワイ島マウナケア山頂(4200m)に建設を計画中の口径7.5m大型光学赤外線望遠鏡(JNLT)では性能向上と経費節減のため剛性の低い薄型メニスカス主鏡を用い、その鏡面を常時モニタ-して変形を計算機制御の能動支持機構で矯正するという能動光学方式を採用する。風圧などの外乱による比較的速い変形にも対応できるシステムとするため、本研究では(1)測定と制御の高速化及び(2)振動の減衰機構の開発を行った。(1)については、既知の能動光学実証用62cm望遠鏡について、その鏡面測定装置及びその解析ソフトウェアに改良をおこなうことにより、測定・解析のサイクル時間を約1/2に短縮することに成功した。波面ゆらぎのある空気中で測定する限り、測定に要する時間をこれ以上短縮することは困難であるというところまで到達したといえる。全体のサイクル時間を最小にするにはあとは支持機構の駆動時間をシリアル制御からパラレル制御にすればよい。(2)については、全く新しい方式の磁気流体ダンパ-を既存の支持機構に組み込むことにより、高速変動に対する安定性がどれくらい向上するかの測定を、試作機を製作し、実測して行った。この結果高周波ながら鏡自体の固有振動数よりかなり低周波の領域での制御にはある程度有効であることが確められた。今後は更に高速・高周波領域で問題となる波面ゆらぎに対する制御方式の開発が必要になるが、これは大型望遠鏡鏡面を矯正するのではなく、焦点に装着した小型の高速像追尾装置及び波面補償装置により実現するべきである。本試験研究はその第1段階としてのノウハウを積む上で極めて有益な実績を挙げることができた。
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