撹拌装置付雰囲気制御炉の試作については、炉体の仕様・設計をシリユニット高熱工業KKの小林重治氏に依頼し、同社により製作納入された(1989年12月)。その後、ルツボ及び撹拌装置の設計、製作依頼を代表者がおこない、それらも完成し現在試運転中である。白金ルツボは容量30ml高さ40mmのものに回転止めの羽根を付けたもので、これを耐火レンガ製のルツボ台に固定する。ルツボ台は炉の下方から数個のジョイントで支持挿入され固定される。炉心管全体はシリコンゴム製のロ-リングでシ-ルドされる。撹拌装置は、白金製の円筒形のものと羽根付円筒形のものを製作した。これらはセラミック棒及びステンレス棒にジョイントで取り付けられ、モ-タ-により2・60rpmで回転される。雰囲気はH_2、CO_2ガスの混合により調整される。通常の溶岩の還元的雰囲気下では溶岩中の鉄は白金中に溶解するので、実際の実験に先立って白金ルツボ及び撹拌装置に鉄を溶解させ、平衡な状態にしておく必要がある。炉の中心部の温度包配は十分に小さく(5℃/4cm)、この点がこれ迄の赤外炉を用いた撹拌実験と異なる。又、溶融試料は随時上方よりサンプラ-で採取急冷して結晶組織を検べることができ、試料の状態の時間変化を追うことが容易におこなえる。 撹拌がない条件での結晶組織については、斜長石-マグマ間のFe分配のfa_2依存性について、第28回国際地質学会(IGC wanington D.C)で発表し、その一部はProceeding of ODPに印刷になった。伊豆大島溶岩の石基組織については、パホエホエ溶岩とPD溶岩で斜長石の結晶核密度が後者より前者で1ケタ小さいことを見出し、実際的にそれがマグマ冷却前のメルトの構造によっている可能性を示した。
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