研究課題/領域番号 |
01850001
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白木 靖寛 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00206286)
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研究分担者 |
片山 良史 光技術研究開発(株), つくば研究所, 研究開発部長
深津 晋 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (60199164)
魚住 清彦 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20011124)
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キーワード | 走査型トンネル顕微鏡 / 結晶成長 / 原子尺度 / Si / Geヘテロ構造 / エピタキシャル成長 / 表面構造 / 5×5構造 / 選択的吸着 |
研究概要 |
本研究の最終的な目的である、走査型トンネル顕微鏡によるSi系結晶成長観察を試みた。一般に、エピタキシャル成長ではSi(100)面が有利とされてきた。しかし、Si/Ge超格子のような応用例ではSiとGeの格子定数の差が障害となり、歪の蓄積に基づく表面構造の変化とヘテロ界面ゆらぎをひきおこす3次元島形成などがおこる。一方、同じSi/Geヘテロ構造であっても(111)面では比較的このような界面ゆらぎが小さい。したがって、(111)面と(100)面での吸着構造の違いをトンネル顕微鏡によって観察し、その微視的機構を探ろうとするのが狙いである。 Si(111)基板を通電加熱によって清浄化し、予め7×7構造ができていることを確認した後、分数原子層のGeを基板温度400℃で蒸着した。この際、供給速度は(111)での表面拡散が(100)面上に比べて遅いことを考慮し、十分に低く設定した。約0.3原子層のGeを供給すると、一部のGeはテラス上で2次元島形成を示すが、島構成原子が30個を越えると、下地のSiが7×7構造であるのに対し、Ge島上では7×7構造に混在して5×5構造が現われる。しかし、さらに島の大きさが増加すると表面構造は7×7へと変化する。また、島の形状は(211)の等価方向をステップにもつおおむね規則的な多角形になる。一方、電子線回折の観察ではGe蒸着により表面構造は7×7から5×5へと連続的に変化し、5×5と7×7の混在は認められなかった。これは、5×5構造の出現が長距離秩序をもたず、局所的にSi/Geの歪を緩和するためにおこることに起因すると考えられる。この他、ステップへのGe原子の吸収が認められたがステップキンクサイトへの選択的吸着が明らかになった。 本研究の主眼は、結晶成長装置に装着可能な走査型トンネル顕微鏡を開発し、従来の方法では評価できなかった結晶成長にともなう表面原子の動き、表面構造の変化など原子尺度の知見を直接得ようとするところにある。その意味において、本研究で開発したSTMは超高真空下で原子像を観察できる能力を有し、なおかつ試料移動機構を備えており、実用化への重要な基礎になると考えられる。
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