前年度に、流しカメラおよびその光源としてのロングパルスレ-ザを製作したが、今年度はそれらを改良しつついくつかの過渡現象を選んで流しホログラムの撮影試験をおこなった。パルス色素レ-ザについては充電電源部を改造し、2本の励起用フラッシュランプを別々に点灯することにより発振時間を30μsまで延ばすことができた。撮影対象として、まず100μm径の導線爆発現象を取り上げた。導線爆発現象は導線自身が発光源でもあり、その発光を抑えるために適切なカラ-フィルタ-を用いてはじめて撮影可能であった。得られた流しホログラムは、爆発直後の1マイクロ秒以下の時間でフリンジ情報が消えていた。これは、急速な導線の膨張によるものであると考えられる。実際、爆発直後に数本の主要なフリンジが非常に速く集束しているのがわかった。これが導線の激しい膨張を表している。ただし、同じ写真にはレ-ザ発光の強度が時間的に一定でないための強度変化も重畳して撮影されている。この強度変化は流しホログラム記録をおこなう上で有害なものである。そこで、流しホログラムの性質、有効性などを改めて見直すために、あえて比較的低速の現象について、連続発振の1W級アルゴンイオンレ-ザを光源とした実験をおこなった。レ-ザの出力から計算して、100μm径の導線による単振り子の運動、同じ導線および光ファイバの強制振動さらには数十ミクロンのガラスビ-ズの落下運動の撮影をおこなった。前3者は、細線のインラインホログラムであり、撮影条件は容易に設定でき、きわめて鮮明でビジビリティの高い写真がえられる。また後者は落下微粒子個々の速度と方向を容易に推定できることを示した。これらの結果は、本流しホログラム撮影システムの有効性をよく現わすものである。
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