電子および光産業の発展に伴い高精度な加工技術への要求が急速に高まっている。しかし、切削や研削のような従来の機械加工法では、工具を使用するため、工具摩耗・加工力による撓み・熱変形等を伴い、これらが加工精度を劣化させる要因となっている。本研究では、本質的に非接触な加工法であるレ-ザ加工によりこれらの誤差要因を克服し、次世代の超精密3次元形状創成法を創造することを目的とし、紫外固体レ-ザによる光解離を利用した材料の除去並びに付着加工を行なった結果以下のような結論が得られた。 1)前年度までの研究により、紫外光を使用したレ-ザ加工では従来のレ-ザに比べ百分の1のパワ-で十分であることが明らかとなったため、日本電気(株)と共同で新しい小型紫外固体レ-ザ装置を開発した。 2)タングステン・ヘキサ・カルボニ-ルを供給ガスとし、これを4倍高調波266nmの紫外レ-ザで光解離し、シリコン基板上に付着させた。この付着量は、レ-ザの出力および照射回数に依存し、レ-ザパワ-に対ししきい値が存在することが明らかとなった。 3)紫外レ-ザを円形絞りを通して、タングステン・ヘキサ・カルボニ-ルガス中の試料表面に照射することにより、メサ形状のタングステンを析出させた。この場合の付着速度は0.01nm/パルスであり、パルス数の制御により原子単位の加工の可能性が実証された。 4)レ-ザによる材料除去でシリコン基板に窪みを形成し、これをレ-ザCVDで形状修正する実験を行なった結果、レ-ザCVDで精密に形状修正ができることが明らかとなった。 5)ポリイミド樹脂に1064nmのYAGレ-ザ光と266nmの4倍高調波を照射して、熱加工と光化学加工を行なった結果、後者では加工面の表面粗さが極めて滑かであり、将来の精密加工に最適であることが判明した。
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