研究概要 |
ディ-ゼル機関からの排出微粒子を低減する最も有望な対策として高圧噴射が検討されているが,通常用いられるジャ-クポンプおよび増圧ピストンによる方法では内部の燃料もれや異常噴射の発生などのために実用化困難である.そこで本研究では,これらの欠点を除くため流体の慣性を利用した新しい形式の噴射方法を考案した.この方法は管路入口を太く先端に行くにしたがって細くなる縮小管を使うことを特徴とするもので,管路入口の機械インピ-ダンスを低く保つことによってプランジャの加速を容易にし,先端において高い油圧を発生させる。すなわち,流体の慣性を利用しポンプ側の圧力上昇を先端で大幅に拡大する.前年度までに,縮小管の圧力増大効果について特性曲線法により詳しく検討するとともに,単行程試験装置を用いてその効果を実証し,本方式が噴射の高圧化に役立つ可能性を示した.これらの結果に基づき今年度は,縮小管による圧力増幅効果を有効に活用するための高圧燃料噴射ポンプを考察した.この噴射ポンプの特徴は,ばねもしくはアキュムレ-タに貯えられた弾性エネルギ-を一気に解放してプランジャ-を加速するもので,可動部に働く力を油圧で釣り合わせておき,少量の油を電磁制御弁によって逃がすことによって起動し高速運動させる.この噴射システムの動特性を計算機シミュレ-ションによって詳細に調べた結果,この噴射装置ではポンプの負担を軽くして高圧が得られること,ノズル側の圧力降下が早いので噴射の切れがよいこと,管路部はすべて正圧で作動するためキャビテ-ションの心配が少ないこと,および全電子油圧制御のため噴射特性が機関回転数に依存しないことなど従来よりも優れた特性をもっており,実用化の可能性があることを明らかにした.
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