本研究の目的は半導体プロセスを利用してシリコンウェハ上にμmオ-ダの機構やアクチュエ-タを作成し、同時に制御回路も作成して、全体として自律的に可動なロボットシステムを試作することである。 従来の機械加工法でなく、半導体プロセスを利用する理由は (1)集積回路の分野で十分に成熟した技術であること。 (2)機械的な構造と制御用の電子回路を基板上に一体化できる可能性があること。などである。微小な機構では、個々の部品からの組み立て作業は困難であるため、(2)の特徴は大切である。 本年度は、加工プロセスの基本操作を経験し、今後のためのノウハウを蓄積することを第1と考えた。そのために以下に述べるような機械要素を作成した。 〔リンクの製作〕製作したリンクは長さ150μm、厚さ約1μmである。ピンは基板に固定されているが、リンクは基盤から完全に分離され、ピンを軸として自由に回転できる。リンクとピンはポリシリコンで構成され、SiO_2を犠牲層として利用した。 〔カンチレバ-の製作〕異方性のエッチングを利用してカンチレバ-(片持ちはり)を作った。異方性エッチングは結晶方位によるエッチング速度の違いを利用して特定の方向に深くエッチングを行う技術である。カンチレバ-の長さは20μmであり、エッチング時間は2時間であった。 〔ばねの製作〕犠牲層を利用する方法で、いろいろな形状のばねを作った。マイクロプロ-ブを用いて針によって弾性変形を与えたり、破壊してみたりして、ばねとしての働きを確かめた。
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