研究概要 |
本研究では対向タ-ゲット式スパッタ形イオン源の諸特性を飛躍的に向上させるとともに、それを用いたイオンビ-ムデポジッション法により酸化物高温超伝導体薄膜の合成を試み以下の結果を得た。 (1)従来の対向タ-ゲット式スパッタ形イオン源に熱電子放出用のフィラメント及びrf電界印加用の電極を付加したイオン源を製作し、その特性を調べた結果、大電流動作においては熱電子やrf電界によるイオン化の促進よりもタ-ゲットから放出される2次電子によるイオン化の効果の方がはるかに大きく、これらの2次電子によるイオン化を効率良く起こさせることで、十分高密度のプラズマを生成できることが分った。 (2)上記イオン源をよりコンパクトで取り扱い易いものにするため、永久磁石内蔵のイオン源を製作し、その容積を1/3以下にすることに成功した。 (3)より大きなイオン電流密度を基板上で実現するとともに、5mm以上の厚さのタ-ゲットを使用できるようにするため、タ-ゲットの中央部にプラズマ引き出し用の穴を設けたプラズマ源を試作し、この方法が従来の方法に比べて20倍程度のイオン電流密度を基板上で実現できることを示した。 (4)引き出されるイオン電流密度はプラズマ収束磁界、イオン引き出し用電極及び基板の電位に強く依存し、それらを最適化することで基板上でのイオン電流密度2mA/cm^2,イオンのエネルギ-半値幅10eVを得た。 (5)酸化物高温超伝導体薄膜形成への応用は、組成制御の面で問題を残しており、いまだ所望の組成の膜を再現性良く得るための方法を確立するに至っていない。これはイオン源から放出される高エネルギ-の酸素原子が基板を衝撃するためであるが、今後、基板および引き出し電極の配置と形状を工夫することにより、所望の組成の酸化物超伝導体薄膜の形成を試みる予定である。
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