本年度は主に多重化された拡散符号の相関特性と本研究の暗号への新たな応用について考察した: 1.区分線形区間力学系のパラメ-タを変化させて発生させた拡散符号系列の相関特性ついては基礎的デ-タが既に得られている。しかし、同系列を多重化させた場合の特性が実際には問題となる。これに対して、数種類の区分線形区間力学系を対象として検討したところ、多重化度が2^5程度である場合迄に対して、通信系として許容できる相関特性が得られることが明らかとなり、実際の設計に対する基準も得られた。なお、数値計算は対象について十分高い精度を用いて行ったが、これに関する理論的考察が課題である。また、符号を生成する力学系の種類を広げる必要がある。 2.本研究の新な応用として、区分線形区間力学系を用いた暗号系の設計法を提案した。同系はパラメ-タを暗号キ-とし、n回合成されたカオス的写像の像をplaintext、逆像をciphertextとするものであり、同写像が不可逆であることによって1つのplaintextが2^n個のciphertext持ち、系が構造不安定であれば理論的には解読が不可能な暗号系であり、今後の発展が期待される。なお、これは本研究における信号秘匿とも深く関連している。
|