物体を振動させ、気体の粘性を利用してその圧力を測定する真空計は被測定系に影響を与えないという点で優れており、これまでにさまざまなタイプの真空計が開発されている。本研究においては、レ-ザ光を薄板に当ててその振動によって圧力を検出する非接触のレ-ザ真空計を提案し、実用化のための基礎的な実験を行っている。本年度は装置の組立および1mTorrまでの圧力に対して実験を行う計画をたてた。計画は予定どうり進み、振幅の圧力依存性あるいは共振の鋭さの圧力依存性などに予想どうりの特性を示し、フォトサ-マル振動を用いたレ-ザ真空計が粘性型の真空計として使用できることがわかった。また、この過程において、共振周波数そのものが分子流領域にはいるとシフトしていくことが実験的に明らかになった。これは従来の粘性振動型の真空計における理論では全く説明のつかないものである。レ-ザ光が試料に当たると板の温度が上がり歪む。光がカットされれば元に戻り、これを繰り返すことによって共振周波数で振動する。このとき、試料からの放熱が十分に行われないと熱の直流分が板にのこる。温度上昇した板の共振周波数は当然シフトする。圧力が変化することにより、熱伝導が変化し、これによって板自体の温度変化によって周波数がシフトするものと考えられる。その特性は同じ熱伝導型のピラニ-真空計ときわめてよく似ている。フォトサ-マル効果を利用した真空計は粘性型と熱伝導型の両方の性質をもつという新しい知見が得られた。これに関しては特許申請を行う予定である。来年度以降については、さらに高真空域において、同様の実験を行う予定である。試料の材質及び形状にかなりの自由度があり、今後さまざまな方向に研究は展開して行くものと思われる。
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