研究概要 |
本年度は,折れ板構造の桁としての強度特性および柱(圧縮板)としての強度特性を把握した上で,折れ板構造の一般的設計法を検討し,最後に折れ板構造の製作上の問題点を整理した。 桁構造の強度設計として,せん断に対しては折れ板とする効果はあまり期待できないものの,曲げについては座屈後の静的安定性をも考慮してウェブ折れ角を15度程度とすれば,水平補剛材と同等の強度が期待でき,材料の降伏応力度に応じた幅厚比制限値を設けるという形で設計指針が提示できる。さらに,圧縮に対しては折れ角5度程度で局部座屈へ移行することによる強度増加が判明し,部分パネルの圧縮強度設計という形でこれまでの設計とも整合できる。しかし,アクリル材を用いた実験の結果のみでは鋼折れ板構造桁の具体的な設計指針を提示するには至らず,さらに鋼材料を用いた実証的研究で確認を急ぐ必要が示唆される。 次に折れ板構造製作面での問題点を鋼板メ-カ-と協力して検討した。実際の折れ加工では一般に理想的な折れ角は製作できず,曲率半径Rの許容範囲が設定される。また,折れ角θが小さければより小さなR/tが必要となる。さもなくば折れ角の戻りが発生し,特にR/tが大きければt/2Rで示される縁応力も小さく,充分な塑性加工領域に到達しないことがある。さらに,鋼種と板厚を勘案して加工中に割れない程度のR/tを設定すべきである。ただし,角型鋼管で折れ角θ=90度ではあるが,R/t=3の精度を確保した実績はあり,加工は充分可能であると思われる。また,板曲げの塑性加工に伴う残留応力あるいは波及効果として板面内方向の残留応力を引き起こす等の,実際に折れ板加工した場合に生じる残留応力の影響についても注意を払う必要がある。
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