本研究は、申請者を中心として進めてきたアコ-スティック・エミッション(AE)波形の理論解析の成果に基づいて逆解析手法を開発することを目的としている。これは6チャンネル以上で検出された波形デ-タを用いて、AE発生源となったひびわれ機構の発生位置、種類、向きを決定するものである。 まず、逆解析法の適用限界の検討のための数値実験を行って、現場に適用した場合における精度について考察した。その結果、対称に配置されていない6チャンネル以上のAEセンサの配置網があれば、実用上問題のない精度でひびわれ機構を決定できることが明らかになった。さらに、10%程度の誤差が信号に混入した場合についても検討し、やはり有効性を確認することができた。 実験における検討としては、当初はコンクリ-ト床版での実験を予定していたが、デ-タ収集の容易さから、コンクリ-トブロックからのアンカ-ボルトの引抜き試験と円筒引張試験に変更された。アンカ-ボルトの引抜き試験の結果では、最終破断面に沿った位置にひびわれ位置は同定され、引張ひびわれが先行し、その後にせん断ひびわれが追従するという機構が解明された。さらに、引張ひびわれの開口方向と破断の方向はよく一致し、せん断ひびわれの運動方向と破断面は平行であるという非常に予想と一致する成果が得られた。また、円筒引張試験では、引張応力下での引張よりも、圧縮領域での横方向ひびわれの存在の可能性が示された。これについては、さらに詳細な検討を追加することにより、ひびわれ機構の解明を行う予定である。
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