研究概要 |
本研究は、模擬太陽装置をもつ風洞内に湿り材料を設置して、材料内部の含水条件、材料表面の気流および放射条件を制御することにより任意の外界気象に応じた伝熱現象を再現し、非定常状態における各種伝熱特性値を迅速に計測するシステムの開発を行うものである。本年度の研究実績は以下のとおりである。 1.湿り材料の伝熱解析モデルおよび伝熱特性値同定方法に関する検討 熱・水分同時移動方程式に基づく詳細な計算モデル(モデル(1))と、熱・水分移動現象を各計算区間毎に等価な熱定数に置き換えて、この熱定数を逐次状態遷移式による定数系の熱伝導式に導入する簡易計算モデル(モデル(2))を取り上げ、それぞれのモデルに対する伝熱特性値の測定・同定方法を整理検討した。本システムで測定する伝熱特性値としては、複数の伝熱特性値を同時に且つ迅速に計測することが可能な、モデル(2)に即した伝熱特性値を選び、この同定アルゴリズムを作成した。 2.伝熱特性値の測定と整理 模擬太陽装置をもつ風洞内に、保水した試料(ALC板)を設置して非定常状態の試料上面・底面温度,試料底面熱流,試料重量,試料上部の風速と空気温湿度を測定した。これらのデ-タより、各時刻の比熱,熱伝導率,熱拡散率,蒸発比を求め、さらに、含水率をパラメ-タとして各伝熱特性値を整理した。また、試料上の空気温湿度および気流速度を変えて実験を行い、再現性に関する検討も行った。 3.伝熱特性値同時測定システムの実用性の検討および研究全体の総括 ALC板を対象にして、解析モデル(2)による計算結果(上記の伝熱特性値を使用)、解析モデル(1)による計算結果、および実測値を比較し、モデル(2)と伝熱特性値の妥当性を検討した。最後に、本測定システムの問題点および今後の課題を明らかにした。
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