陽電子を使用した研究は、電子の運動量分布を直接測定できる方法として注目され、最近では、低速陽電子を使用したものもある。陽電子寿命測定法は、なかでも陽電子が物質中の格子欠陥や空孔などにトラップされ、この様な結晶欠陥を選択的に検出できるため、欠陥研究の分野で多くの成果をあげてきた。しかしながら、より精度よく測定するためには、高度のエレクトロニクス技術の面からの研究が必要であり、時間分解能200ピコ秒の測定が必要となる。 このため本研究では、ふっ化バリウム結晶の30nmのシンチレ-ション発光を使用し、より測定精度の向上と、検出効率の向上をめざした。ふっ化バリウムの30nmの発光スペクトルは、2インチ直径の光電子増倍管(たとえばフィリプス社製×P2020Q)ではとらえる事ができるが、より直径の小さい3/8インチの光電子増倍管では、エネルギ分解能が低い事がわかった。そこで当初の目的とした狭い部分での測定を行うため、光電子増倍管は標準のものとし、光ファイバでシンチレ-タからの発光を伝達する方式を検当した。光フィイバの発光時間分解能の測定と、発光の伝達特性の測定を行っている。本年度、発光スペクトルを光電子増倍管でとらえた時のエネルギ分解能は、半値幅で100keVあり、この分解能の検出系の設計と、エネルギ分解能の向上は、平行して行う必要があり、以上が三年度の研究の課題として残されている。
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