研究概要 |
Na_2OーB_2O_3系フラックスとFe_2O_3間のMn,AlおよびTiの分配比を800〜1100℃で求めた。実験はNa_2O・2B_2O_3とB_2O_3をNa_2O/B_2O_3(モル比)=1/2〜1/4になるように秤量混合し,これにFe_2O_3粉末(各温度におけるFe_2O_3溶解度の約1.5倍量)およびMnO_2(0.3〜3%),Al_2O_3(0.3〜5%)またはTiO_2(0.5〜3%)を加え,Ptるつぼ中でPt棒により攪拌しながら8〜48時間保持した。その後,試料を水中急冷し,フラックス中およびFe_2O_3結晶中のMn,Al,Ti濃度をEPMAおよび湿式分析により求めた。希硝酸によりフラックス分のみを溶解除去した後のFe_2O_3結晶は,Na_2O/B_2O_3(モル比)=1/2の場合は六角板状,1/3および1/4の場合は丸味を帯びた多面体であった。フラックス中のFe_2O_3濃度が実験時間に依存せず一定であるのに対し,これら結晶は時間と共に大きくなった。このことから,Fe_2O_3結晶合長機構は,小さい結晶が溶解し大きな結晶が成長するOstwald熟成機構であることがわかった。 結晶の断面についてEPMAによりMnの線分析を行ったところ,結晶中にMnは均一に固溶していた。初期にMnを入れずに結晶を成長させ,1時間後にMnO_2を添加して24時間保持した実験で得られたFe_2O_3結晶断面の線分析では,中心部にMnを含まない領域が存在していることが判った。固相中でのMnの拡散は非常に遅く,Mnは拡散によってFe_2O_3中に入ったとは考えられず,固液間の平衡分配比を保ちながら結晶成長面に取込まれたと考えられた。AlおよびTiについても同様であった。 Fe_2O_3結晶ーフラックス間のMn分配比(結晶中の全Mn濃度/フラックス中の全Mn濃度)は1000℃においてNa_2O/B_2O_3=1/2では1,1/4では0.8であった。いずれのフラックス組成においても低温ほど大きい値となった。また,Fe_2O_3結晶中にMnはMn^<3+>として存在することがわかった。一方,1000℃,Na_2O/B_2O_3=1/2において,AlおよびTi分配比はそれぞれ0.02および1であり,高温ほど高い値となった。つまり,Fe_2O_3の純化を考えれば,Mnは高温での,Al,Tiは低温での再結晶法が望ましいことになる。Si,B,Ca,Mg等についても温度依存性を求める必要がある。高温でフラックス中にFe_2O_3を完全に溶解し,急冷してガラスとした後,再加熱してFe_2O_3を晶出させるガラス結晶法により,鉄鉱石の純化を行うことが今後の課題である。
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