研究課題
前年度までの研究で、ロケット燃焼器外殻材料としてAl-CuおよびCu-Ag合金系と選択し、低剛性外殻形成のための焼結条件を明らかにした。それらの成果にもとづいて、小型ロケットノズルを試作し、耐圧テストを実施したところ気密が必ずしも十分ではないことがわかった。その原因を詳細に調査したところ、燃焼器スロ-ト部分と上端と下端円周部分に焼結接合不良が発生することが明らかになった。これは前年までの基礎研究に用いたストレ-トモデルでは経験しなかったことであり、新たに発生した深刻な問題であった。そこで、Cu-Ag合金系を外殻材とし、実機を模擬したOMC材スロ-トモデルを用いて、内筒OMC材との焼結接合性を観察し、未接合部発生の原因を検討した。その結果、未接合部は最も細くくびれたスロ-ト部分と、テイパ-部とストレ-ト部の境界部分、およびストレ-ト部の端部に発生することがわかった。発生原因は直接焼結収縮に関係しており、固相焼結と常圧結接合に原理的に付随する問題と考察された。この問題の解決のために、焼結接合性を向上させる液相の発生と適切な加圧効果を積極的に利用していく方策をとった。加圧は、ガラスカプセルに真空封入して大気圧下で焼結するいわゆるCAP法を用いた。焼結条件の適切な制御により、未接合部のない外殻形成に成功した。健全な外殻形成が保障される焼結条件では、低剛性をもたらす気孔の体積分率もほぼ適当な範囲にあり、これまでの応力解析からみても長寿命ロケット燃焼器に向けて大きな期待を抱かせるものである。本成果を踏まえて、再び小型ロケットノズルを試作し耐圧テストおよび燃焼試験を実施する計画を進めている。
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