研究概要 |
基板材料として、Si_3N_4、SiC、WC、TiC、Al_2O_3秤セラミックス、WCーCo、Ti(C,N)ーNiのサ-メット、Co、Niの金属を用い、合成処理はTaCフィラメントを用いた熱CVD装置によって行った。まず、何れの基板を用いた場合でも、フィラメント温度、基板温度、CH_4+H_2ガス中のCH_4濃度の制御を行うとダイヤモンド合成が可能であることが分かった。なお、合成速度はフィラメント温度、CH_4濃度が高いほど上昇し、本研究で得られた膜生成速度は最大約8μm/hであり、これは熱CVD法による従来の値(0.5μm/h)にくらべて極めて高いものであった。また、何れの基板についても、基板表面に対し合成処理前に傷つけ処理するとダイヤモンドの生成密度が著しく上昇した。WCーCo、Ti(C,N)ーNi基板表面部の金属相を除去することによりダイヤモンド生成密度が上昇することなども分かった。基板を約900℃に加熱しながら最大10μm厚さのダイヤモンド膜を合成した後冷した時の膜の剥離現象を観察した結果、TiC、Ti(C,N)ーNi、Al_2O_3、Co、Ni基板では被膜厚さが1〜2μmでも被膜が剥離し、SiC、WC、WCーCo基板では約8μm以上で剥離が認められたが、Si_3N_4では膜は剥離しないことが分かった。そして膜が剥離しやすかった基板は熱膨張係が大きい物質であることが分かった。さらに、Si_3N_4、SiC、WC、WCーCo基板について被膜(5μm)中の残留応力を測定したところ、いずれも圧縮応力が測定され、その大きさは、Si_3N_4<SiC<WC<WCーCoの順となり、また熱応力の計算値とほぼ一致した。さらに、被膜の密着強度を圧下試験および圧縮試験により評価すると、残留応力の最も小さかったSi_3N_4基板でダイヤモンドの密着強度が最も優れることが明らかとなった。さらに本研究では密着強度におよぼす基板表面の加工状態の影響を調べ、基板表面に凹凸を施すとダイヤモンド膜の機械的保持により密着強度が改善されることを示した。
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