研究概要 |
1.【目的】今年度は,当初の予定ではAlーMg系の高温の状態図の決定を行う予定であったが,昨年度の実験の経験から今回試作した簡易高圧装置の温度制御が極めて良好なことが判明したので,この実験装置の特徴を生かして拡散が遅く長時間焼鈍が必要なため,従来実験が難しかったAlーZn系の低温度域の状態図の作成を試みることに変更した.AlーZn系は時効処理を施してその強度を改善するジュラルミンの基本系のひとつであるため,とくに低温度領域の状態図が必要とされているからである.また,高温度域における,Zn相中へのAlの固溶限,Zn側の固相線と液相線の圧力による変化も決定した.2.【実験方法】99.99%Al,99.9%Znから大気溶解により数種類のAlーZn合金を作製し,均一化焼鈍を行った.常圧実験では,これらの合金をそのままあるいは組み合わせて拡散対として,大気中あるいはシリカチュウブ内にArガスとともに封入して,焼鈍した.一方,高圧実験は,常圧と同じ合金をそのままあるいは拡散対として,窒化ボロンの容器に入れ,パイロフェライトの圧媒体を通して簡易型あるいは立方体アンビル型装置を使って高圧焼鈍を行った.焼鈍後,拡散対と合金はEPMA分析により相境界濃度を測定し,状態図を作成した.3.【結果】(1)本研究の常圧力下の状態図は今までに報告されているものと良い一致を示している.(2)2.1GPaの高圧力を加えることにより,Zn相中へのAlの固溶量は増大する事がわかった.(3)得られた高圧力下のZn側の液相線固相線を外挿することにより共晶組成は87at%Zn共晶温度は750Kであることが明らかとなった.(4)偏晶温度は大気圧力下では550Kであるが,2.1GPaの高圧力下では約100K上昇して650Kであった.(詳細は添付図面参照)当初の予定を変更してAlーZn系で実験を行ったが,簡易型で高圧を得ることには成功し,しかも材料の機械的特性などを向上させるうえで非常に興味深いこれらの結果を得ることができた.
|