研究概要 |
前年度の研究で明らかになった“応力が低温割れを支配している重要なパラメ-タである"ことを利用して,実物の割れ試験を模擬した鉄研割れ試験で実験を行った.実験結果はインプラント試験及びTRC試験で有効であった応力で整理できなかった.この原因は実験前から予想していた相変態による応力の変化と考えられる.相変態のために割れ発生部の応力が精度良く予測できなかったことが,拘束応力である外応力で実験値が整理できなかった原因と考えられる.今後,相変態により生じる応力を評価する方法を確立する必要がある. 実施工の溶接割れを防止する方法として,日本では予熱による水素濃度の低下の方法を用いている.低温割れ防止のアルゴリズムを作成する上では,溶接熱サイクルを予測して,溶接施工条件から割れ発生時の水素濃度を予測する必要がある.そこで,会社で一般に使用されている局部予熱施工を対象として,局部予熱条件である板厚,予熱時間,予熱幅,継手形状を入力すると目的の予熱温度になるために必要な局部予熱施工条件が出力されるプログラムを作成し,実験値と比較検討した.その結果,現場で十分に使用できるソフトが完成した.次に,溶接施工条件と局部予熱条件を結び付けて,水素濃度の予測に必要な熱因子に結びついた冷却時間を実験と計算で比較検討した.そして,水素濃度に結びついた冷却時間を予測できるソフトを完成し,鉄研割れ試験の結果から得られる熱因子,硬さに結びついた冷却時間を入力することにより,実施工での割れ防止に必要な局部予熱施工条件が出力される低温割れ防止のアルゴリズムを完成した.しかし,初期に予定していたインプラント試験結果からの低温割れ防止のアルゴリズムには成功しなかった.今後,相変態と応力の関係を研究する必要がある.
|