研究概要 |
Abbeの回析理論で決まる回析限界を超えて、波長の10分の1から100分の1程度の空間分解を有することのできる近接場走査型の光学顕微鏡を赤外領域に応用し、分析顕微鏡として用いることを目的として,理論的及び実験的基礎研究を行なった。以下に、本年度の具体的成果を述べる。 1.理論解析:MarchandとWolfの理論及びアンギュラ-スペクトルの考え方に基づき、現実的な大きさの開口(波長の10分の1程度)に対する微細構造の再回析の効果及びそれによるエバネッセント波から伝播波への変換について理論的解析を行ない、システム設計のための新たな知見を得た。 2.コンピュ-タ・シミュレ-ション:上記理論に基づき,実際の数値パラメ-タを代入して,コンピュ-タシミュレ-ションを行なった。 3.チップの作製:ZnSe結晶及びAgCl・AgBr赤外ファイバ-をそれぞれ先端研磨し、チップ化した。また、1μmφ及び5μmφのピンホ-ルをもつステンレススクリ-ンも、ニアフィ-ルドのスポットパタ-ン測定に用いた。 4.基礎実験1:CO_2レ-ザ(10μm)と光源として用い,ピンホ-ルをサンプルとし,チップを3軸のピエゾポジショナ-で駆動させて,赤外ニアフィ-ルド領域における空間分布測定を行ない,装置化への検討を行なった。光軸方向のチップの微小駆動と,光源の変調の2重のロックイン検出が必要であることを確認した。 5.基礎実験2:赤外フ-リエ変換分光器にカセグレン対物鏡2対とピンホ-ル,チップを組み込み,多層フィルムの層分布等の測定を行ない,ピンホ-ル径の数倍の長さの波長に対してもスペクトルを計測することができた。 6.実用化への検討:理論的,装置的にもまだ多くの研究課題がある。
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