本年度は昨年度の基礎的実験結果をベ-スとして、今後固体燃料電池用固体電解質としてプロトン伝導体が有利と考え、主として三酸化ストロンチウムセリウム系固体電解質(SrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_3)と三酸化ストロンチウムジルコニウム(SrZr_<0.95>Yb_<0.05>O_3)の双方について、プラズマ溶射による薄膜生成を試み、その溶射条件及び生成皮膜の物性についての測定を行なった。特に前者の試料については粉体試料の前処理や仮焼条件及び溶射時の基板温度条件などをコントロ-ルし、それ等の因子に対する固体電解質の物性の変化を交流法による伝導度測定やX線回折、ESCA分光分析を通して詳しく調べた。粉体を各組成原料SrO、CeO、Yb_2O_3から組成比で混合し、一段で溶射した場合は目的とする固体電解質の生成は充分行なわれなかった。しかし基板を加熱するとその生成量は飛躍的に向上したが、未反応物が残ることがわかった。この為粉体を仮焼し、特にSrOは市販のSr(OH)_2を用いるので仮焼の段階でSrCOH_2とCeO_2を混合し約600℃程度まで熱処理すると、溶射の段階ではほゞ100%SrCeO_2が生成することがわかった。この成果は第'90電気化学協会秋季大会(千葉大学、1990.9)で発表した。しかし、焼結体に比べると伝導度は1桁程度小さく、今後粉体粒度等の調整が必要であることがわかった。次に機械的に強度のあるSrZr_<0.95>Yb_<0.05>O_3について薄膜製造を試みた。こちらの方は反応温度が高く、混合粉体の一段溶射では更に生成率が悪かった。仮焼温度を上げていくつか試みているが、今のところ100%SrZr_<0.95>Yb_<0.05>O_3が得られておらず、従って伝導度も焼結の場合に比べて2桁程度悪かった。現在は更に仮焼条件や溶射条件の選定に関する条件を探っている。
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