研究課題/領域番号 |
01850187
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研究種目 |
試験研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
干鯛 眞信 東京大学, 工学部, 教授 (60011011)
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研究分担者 |
碇屋 隆雄 日本鋼管株式会社, 中央研究所・第四研究部, 主査
石井 洋一 東京大学, 工学部, 助手 (40193263)
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キーワード | シクロカルボニル化 / 1ーアセトキシー3,7ージメチルナフタレン / 5ーヒドロキシー1ーナフトエ酸 / 液晶 / 縮合ヘテロ芳香族 / ジフェニルケテン |
研究概要 |
まずナフタレンカルボン酸骨格合成の戦略として、シクロカルボニル化を用いたメチルおよびジメチルナフタレン誘導体の合成とそのメチル基の酸化を検討した。すなわち、(o-Tol)CH=CHCH_2OAcをPdCl_2(PPh_3)_2触媒でシクロカルボニル化して1ーアセトキシー5ーメチルナフタレン1__ーを49%で得た。同様に(p-Tol)CH=CMeCH_2OAcより1ーアセトキシー3,7ージメチルナフタレンが得られた。ついでこれらの化合物のCo-Mn触媒による酸素酸化を検討したところ、O_218atm、160℃の条件で1__ーの酸化が進行して約90%で5ーアセトキシー1ーナフトエ酸2__ーを得た。2__ーと4ーアセトキシ安息香酸3__ーのポリエステルは、物性測定の結果、2__ー/3__ーが6/4、7/3のときそれぞれ254ー268℃、268ー310℃で液晶となることが判明した。液晶温度範囲が限られている、重合が難しいなどの欠点があり液晶性は劣るが、新しい材料合成に本法が利用できる可能性が示されたと考える。また、本法を効率よく行うには鍵となるシクロカルボニル化の機構解明も重要である。この目的でPd、Ptのアシル錯体の合成と反応を検討したところ、CO下ではPt(PPh_3)_4とPh_2CHCOCl4__ーの反応によりPtHCl(PPh_3)_2とPh_2C=C=Oが生成するという、従来知られていない反応性を見出した。反応速度の解析からまず4__ーのPPh_3によるエノ-ル化が起こり(律速段階)、次いでPt(CO)_n(PPh_3)_<4ーn>がHClを引き抜くという機構で反応が進むことが判明した。シクロカルボニル化との直接の関与は明らかでないが、各種の触媒反応の機構を検討する上で重要な知見が得られたと考える。一方、ナフタレン以外の縮合環系、特に縮合ヘテロ環系には多くの有用物質、天然物が知られており、それらの合成は合成化学的、工業的に興味ある課題と言える。そこで種々のヘテロ芳香族置換アリル化合物をシクロカルボニル化したところ、対応するベンゾフラン、インド-ル等が収率よく得られた。本反応はさらに生理活性物質などの合成に利用でき、この点も今後検討の予定である。
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