研究概要 |
前年度までの研究において.環状ジペプチド、シクロ(SーフェニルアラニルーSーヒスチジル)を用いて、アルデヒドに対してシアニ化水素による不斉ヒドロシアノ化を行うとR体のシアノヒドリンが、一方、シクロ(SーロイシルーSヒスチジル)を用いた場合にはS体のシアノヒドリンが優先的に生成することが明らかとなり、両方のエチンチオマ-を自在に作り分ける方法論が確立された。 本年度は、基質のアルデヒドとしてα,βー不飽和アルデヒドに着目し、シクロ(SーフェニルアラニルーSーヒスチジル)、シクロー(SーロイシルーSーヒスチジル)を触媒として用い、不斉ヒドロシアノ化を行い、α、βー不飽和アルデヒドシアノヒドリンの合成研究を行った。α_1,βー不飽和アルデヒドシアノヒドリンはアリルアルユ-ルの構造を有しているためさまざまな立体特異的、選択的な変換反応が可能であり、種々の天然物、生理活性物質の重要な合成中間体として期待されている。基質としてトランスー2ーヘキセナ-ルを用い、シアン化水素の付加反応を行ったところ、シクロ(SーフェニルアラニルーSーヒスチジル)を用いた場合、相当するシアノヒドリンが62%の不斉収率で得られ、その絶対配置はR体であった。一方、シクロ(SーロイシルーSーヒスチジルノ)を用いた場合にはS体のシアノヒドリンが42%の不斉収率で得られた。同様の反応を、クロトンアルデヒド、2ーエチルー2ーヘキセナ-ル、メタクロレイン、3ーメチルー2ーブテナ-ルなどのα^1,pー不飽和アルデヒドに対して行ったが、いずれの場合にも、触媒を使い分けることにより、相方のエナニチオマ-を合成することに成功した。
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