二種類のアミノ酸残基から構成される環状ジペプチド(人工酵素)を触媒として用いることにより、アルデヒドに対するシアニ化水素の付加反応を行い、シアノヒドリンの不斉合成を行った。環状ジペプチドとしては、SーフェニルアラニンとSーヒスチジンから構成される、シクロ(SーフェニルアラニルーSーヒスチジル)を用い、基質としてベンズアルデヒドを用い反応を行ったところ、収率は97%、不斉収率97%で相当するシアノヒドリンであるマンデロニトリルを得た。この際生成物の絶対配置は(R)体であった。これは、本反応が進行することが知られている、酵素、オキシニトリラ-ゼに必敵する高い選択性である。 一方、環状ジペプチドの構造を変化させた、シクロ(SーロイシルーSーヒスチジル)を触媒として用いて同様の反応を行ったところ、生成物の立体化学の逆転したS体のシアノヒドリンを優先的に得ることに成功した。 この結果、環状ジペプチドの種類を適当に選択することにより両方のエナンチオマ-を自在に作り分ける方法論の確立に成功した。この結果を利用することにより、α、βー不飽和アルデヒドの不斉ヒドロシアノ化を行うことによる、α、βー不飽和アルデヒドシアノヒドリンの合成を行った。基質として、トランスー2ーヘキセナ-ルを用いた場合、シクロ(SーフェニルアラニルーSーヒスチジル)を触媒とした時には(R)体のシアノヒドリンが、シクロ(SーロイシルーSーヒスチジル)では(S)体が得られた。
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